2025年度視覚障害者の働くを考える座談会

当会では、標記「座談会」の開催を通して、視覚障害者の福祉・労働に関わる関係機関に、石川県における視覚障害者の就労環境の現状への理解を促し、視覚障害を持って生まれ育つ、また、中途で視覚障害を持つ方への就労支援体制構築の必要性を訴えている。
 今年度の座談会では、日本視覚障害者職能開発センターの藤縄氏による「中途視覚障害者へのジョブコーチ支援」についての講演を行った後、当事者ご本人(中途視覚障害・在職中)に参加いただき、実際の事例を基に2グループに分かれてグループワークを行った。
 架空の事例ではなく、実在する当事者の「今」の悩みや課題を共有することで、より具体的かつ現実的な支援策や、将来を見据えたキャリア形成について行政・支援機関・当事者が共に考え合う場とした。

イベント詳細

  • 日時: 令和7年11月7日(金) 13時00分~16時00分
  • 会場: 金沢市長土塀青少年交流センター 3階学習室2・3
  • 内容:

1. 報告 石川県の障害者就労の現状
石川労働局職業安定部職業対策課 地方障害者雇用担当官 前川伸一郎 氏

2. 講演 中途視覚障害者へのジョブコーチの支援について
日本視覚障害者職能開発センター 主任就労支援員 藤縄泰彦 氏

3. 視覚障害者の相談事例検討グループワーク

4. 就労支援に係る各機関からの取り組みおよび現状報告

  • 参加者:

関係機関等 9名(3機関欠席・書面報告あり)
日本視覚障害者職能開発センター、
石川県視覚障害者協会、
石川労働局、金沢公共職業安定所、
石川障害者職業センター、
石川県商工労働部労働企画課、
金沢市福祉健康局障害福祉課(2名)、
金沢障害者就業・生活支援センター

(書面報告)
石川県立盲学校、
石川県福祉健康局障害保健福祉課、
金沢市経済局労働政策課(後日配布)

ゲスト(当事者) 2名
「あうわ」視覚障害者の働くを考える会 12名

  • 後援: 金沢市経済局労働政策課

報告・グループワークの概要

報告 石川県における視覚障害者の就職を取り巻く状況

  • 視覚障害者の新規求職申込は毎年30名程度で推移している。
  • 就職件数は例年15名前後であったが、令和6年度は6名と減少した。これは失業給付の受給期間等の事情で「ゆっくり探したい」という方や、高齢のため活動を控える方が多かったことが要因である。
  • 令和6年6月1日現在の県内企業(県内に本社を置く企業)における視覚障害者の雇用者数は、ちょうど100名である。
  • 県内のハローワークで求職登録を行い、実際に活動中の視覚障害者は現時点で19名。平均年齢は51.9歳であり、およそ6割(12名)が重度の視覚障害である。
  • 重度視覚障害者の希望職種について、かつては6~7割が「あ・は・き」(ヘルスキーパー含む)を希望していたが、現在は4割程度まで減少している。
  • 応募職種は多様化しており、一般事務、事務補助、倉庫内軽作業、清掃、調理補助などへ広がっている。昨年度は重度の方でも駐車場整理や事務補助での採用実績があった。
  • 「あ・は・き」関連の求人は県内で80人分(うち障害者求人18人分)あり、数としては希望者を賄える状況だが、条件面でのマッチングが課題となっている。

講演 中途視覚障害者へのジョブコーチ支援

  • ジョブコーチには配置型(職業センター)、訪問型(支援機関)、企業在籍型の3種類があり、視覚障害者支援では配置型と訪問型が連携する「ペア支援」が有効である。
  • 具体的な支援として、当事者へは支援機器(音声読み上げソフト等)の導入や操作指導、通勤・社内移動の動線確認を行い、企業へは職務の切り出しや環境改善の提案を行う。
  • 最近の傾向として、Windows 11への移行やチャットツール(Slack, Teams等)の導入支援が増加している。また、リモートワークで就職した地方在住者へのジョブコーチ支援(現行制度では困難)のニーズが高まっており、今後の課題である。

グループワーク

在職中に網膜色素変性症が進行している40代女性(田中氏・仮名)ご本人に参加いただき、2グループに分かれて検討を行った。

事例概要: 一般企業勤続27年。進行による見えづらさへの不安、安全な通勤、PC作業の困難さ等の課題を抱えている。

◎グループ1(生活面・長期的視点)

  • 通勤課題: 公共交通機関の利用が困難になった場合、会社の近くへの転居や、福祉有償運送の検討が必要となる。
  • 働き方: ご本人の「この会社で働き続けたい」という強い意欲を尊重し、将来見えづらくなった時にどのような働き方が可能か、今のうちからイメージを共有することが重要。
  • 企業連携: 企業側も支援方法を模索している段階のため、医療機関(主治医意見書)や支援機関と連携し、具体的な配慮事項を伝えていく必要がある。

グループ2(業務面・具体的対策)

  • 勤務形態: テレワークの導入や時差出勤の積極的な活用が望ましい。車通勤ができなくなった場合は転居も視野に入れる。
  • スキル習得: 将来の視力低下を見越し、視力が残っているうちからスクリーンリーダー(音声読み上げソフト)の操作訓練を開始し、業務効率化を図るべきである。
  • 職場環境: 上司だけでなく同僚へも障害理解を広め、ヘルプを出しやすい環境を作ることが継続就労の鍵となる。

グループワークの総括(日本視覚障害者職能開発センター)

  • 通常、架空の事例検討が多い中、ご本人が参加されたことで「今」のリアルな状況に基づいた建設的な議論ができた。
  • 将来(5年後、10年後)を見据えた準備と、現在直面している課題への対応の両輪で支援していくことが大切である。
  • 各機関の連携(チーム支援)の重要性が改めて確認された。特に、医療・福祉・労働が連携し、早い段階で当事者を適切な支援につなぐコーディネート機能が必要である。
  • 視覚障害者の就労は個別の配慮事項が多く、企業側も戸惑っている現状があるため、ジョブコーチ等の専門的支援の介入が不可欠である。
  • 当事者が参加したことで、支援者側にとっても「支援の在り方」を再考する貴重な機会となった。

就労支援に係る各機関からの取り組みおよび現状報告

  • 金沢障害者就業・生活支援センター: A型事業所からB型への移行に伴い転職活動を行った事例(松原氏)を報告。ハローワークや関係機関との「チーム支援」により、一般企業のヘルスキーパーとして採用された。
  • 当事者(松原氏): 雪道での歩行訓練など、親身な支援のおかげで就職でき、現在は事故なく通勤できている。
  • 石川県立盲学校(書面報告): 生徒数が減少傾向にあり、職域の拡大が課題。職場実習の開拓において企業側の理解不足を感じることが多く、啓発活動を継続している。
  • 石川県障害保健福祉課(書面報告): 能登半島地震でのニーズを受け、今年4月より「代筆・代読支援員派遣事業」を新たに開始した。
  • 石川労働局・ハローワーク・職業センター: 法定雇用率引き上げに伴い企業も敏感になっている。従来の枠にとらわれない職域開拓や、福利厚生としての雇用提案などを行っている。職業センターでは中途視覚障害者のリワーク支援に注力している。

座談会アンケート結果

Q.あなたの所属先を記入してください

  • 金沢市
  • 石川県労働企画課
  • 石川障害者職業センター
  • 金沢障害者就業生活支援センター
  • 金沢市障害福祉課
  • 石川労働局
  • 金沢公共職業安定所
  • 石川県視覚障害者協会

Q.石川労働局 石川県の障害者就労の現状について

そのように回答した理由を、ご記入ください5 件の回答

  • わかりやすかったです
  • 視覚障害者の細かいデータを知ることができるため
  • 視覚障害のある方の細かな情報を知る機会がなく、知れてよかった。
  • 状況がよくわかった
  • 障害のある人の就労状況が確認できたためよかった

Q.日本視覚障害者職能開発センター 中途視覚障害者へのジョブコーチの支援について

そのように回答した理由を、ご記入ください6 件の回答

  • 丁寧な説明でした
  • どのような支援をしていらっしゃるかわかったため
  • 支援のトレンドなども伺えて参加になりました。
  • 内容がよくわかった
  • 支援についての状況がわかりました
  • センターの活動状況が理解できよかった

Q.視覚障害者の相談事例検討グループワークについて

そのように回答した理由を、ご記入ください6 件の回答

  • 当事者のリアリティのある話を聞くことができました。
  • 正解はなくとも様々な意見を聞くことができるため
  • 当事者がみえる形でよかった。
  • 多職種での意見交換で勉強になった
  • 当事者の方がいるグループワークは珍しく、確認しながら進められました。
  • 関係者との意見交換ができよかった

Q.就労支援に係る各機関からの取り組みおよび現状報告について

そのように回答した理由を、ご記入ください6 件の回答

  • フリートーキングでも良かったかもしれません。
  • 実情を知ることができるため
  • 各機関の声を聞くことができてよかったです。
  • 他機関の取り組みを知ることができた。
  • 各機関の取り組み状況がわかり良かったです。事前に取り組み状況を話すことが分かれば助かります。
  • 現状を理解することができよかった

Q.視覚障害者の就労と現実について今どのように感じておられますか。  6件の回答

  • 行政の支援がないわけではないと思います。いかにその情報を届くようにするかが大事だと思います。
  • 機構の助成金にも限度があり、通勤問題は切実です。
  • ノウハウや情報がまだまだ少ないと感じました。
  • 職場支援、移動支援の課題をどうするか
  • 中途障害の方も多く、障害の程度も個人差があるため、各人に合わせた就労への支援を行う必要を感じています。
  • 関係者の間で連携した取り組みが進みつつあると感じています。

<今回の座談会を振り返って>
この地域での視覚障害者の就労環境を改善するために気づいた点はありますか。また、そのためには何が必要だと思いますか。 5 件の回答

  • 一朝一夕で解決する問題ではありませんので、皆さんと一緒に考えていく必要があると思います。
  • 訓練を継続的に受けられる施設の不足
  • 通勤問題、通勤支援は必須です。
  • 通勤や専門医などが難しく感じています。
  • 公共交通機関だけでなく、土地柄で降雪もあるため、安全な通勤が必要だと考えています。また、企業における配慮についても、障害の理解とともに必要であると感じます。
  • 改めてこれまで気づいてきた関係者との連携を大切にしていきたいと考えています。

<今回の座談会を振り返って>
今取り組めることがありましたらお書きください。4 件の回答

  • 行政の支援内容の周知かと思います。
  • 職員での情報共有。
  • 障害の程度はさまざまなため、視覚障害がある方の希望や経験を聞き取りしながら、企業へは障害への理解を促進させ、就職のマッチングを行ってまいりたい。
  • それぞれの立場で具体的な事例について相談にあたることが大切であると感じています。

次回、取り上げたい、取り上げてほしいテーマがありましたらお聞かせください。 4 件の回答

  • 継続していくことが大事かと。
  • 雇用している会社の声などか聞けるとよいと思います。
  • 在職中の視覚障害の方がどのような支援や企業理解を得て、仕事を続けているか知りたいです。
  • 特になし

その他、ご意見・ご感想 3 件の回答

  • ありがとうございました。
  • 貴重な座談会でした。
  • 特になし
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